12/25
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聖なる夜に、死を運ぶ。
浮き足立った群衆の笑い声や、酒場の扉が開くたびに漏れ聞こえる賑やかな合奏。大通りの喧騒が、遠くの方でかすかに響いている。
あちら側では、人々が神の誕生を祝い、温かな家路を急いでいるのだろう。
だが、この暗がりに立つ相手は、光の届く場所には決して姿を現さない。相手が何者であるか、No.49は思考を割かない。真実を求めるのは仕事ではない。余計なことを知る必要がないからだ。
No.49は音もなく一歩を踏み出し、指先で使い慣れた鉄の感触を確かめた。
上着のポケットに沈んだ愛銃の冷たさは凍える指先よりもずっと鋭く、麻痺しかけた神経を現実へと繋ぎ止めている。
今夜の仕事は、引き金を引くことではない。懐から取り出した一通の封書。それは湿った空気を吸って、ひどく重く感じられた。
「依頼主は、君の無事を願っているそうだよ」
吐き出した言葉は、冬の空気に触れて白く濁った。理解し難い執着だった。
「わたしの仕事は、君がそれを受け取ったことを見届けるまで。受け取ったら、それで終わり」
ただの運び屋。殺しに比べれば、欠伸が出るほど容易い仕事のはずだった。けれど、自分たちが決して祝祭には混ざれない異物であることを突きつけてくる。
差し出した封書が相手の手へと渡り、指先から確かな重みが消えた。
指先が離れる瞬間、微かな震えが伝わってきたのは、寒さのせいか、それとも受け取った側の絶望ゆえか。No.49はそれを確かめはしない。
役目は果たした。依頼にはこの場所で死を届けることだけを伝えられた。この封書の中身が何であるか、No.49には知らされていない。
ただ、呪いか、あるいはそれ以上に救いのない代物であることだけは予感できた。
役目は果たした。死んだ後の死体が雪に埋もれようと、誰かに見つかって騒ぎになろうと、それはNo.49の預かり知らぬことだ。
自分にとっての真実は、任務完了を告げる安堵だけであるべきだった。
白く降り積もる雪も、凍てつく石壁も、己の指先さえも、ここではただ等しく無価値な灰色の濃淡に過ぎない。No.49は雪を被った肩を払い、大通りの喧騒とは逆の方向へ歩き出した。
背後で、重い扉が閉まるような、あるいは何かが崩れ落ちるような、乾いた音がした。
だが、振り返ることはしない。積もった雪が重みに耐えかねて落ちた音だろうと、己に言い聞かせた。
このまま闇に紛れれば、自分もまた、ただの風景の一部になる。
明日の朝には忘れ去られる、降り積もったばかりの雪のように。
代わりの利く、使い捨ての、名前のない誰かとして。