本と手袋
本と手袋
彼は、世界を多面体と評した。
本質は、ひとつ。しかし、向きを変えれば見え方も変わる。
並ぶ可能性を、彼はそう見た。
私はそれを面白いと思った。
だから、私の世界は多面体だ。
この世界は私のものだが、私の言葉は彼へ贈ろう。
君が反した杯は、確かに私の世界だった。
「僕はここにいるよ、アベル。
もちろん、君の言葉は届いたし、君の声は何時まで経っても聞こえない」
「もういいかい?」
「君には話したことがなかったね。それより先に、君はこのとおり。寂しいね。
この話には続きがあるんだ。もう聞いてくれないね。あー寂しい」
「これは自慢だけど、僕は天才だ。君もよぉく知ってる通り、僕はもう本当に天才だ。
そして、天才の僕からいつかの君にクリスマスプレゼント。君の杯。君のための角度」
「結局君は、杯を返してしまったけど。そのままどっか行っちゃったけど。泣いていい?」
(すすり泣き)
「ぐす。それからしばらくして、僕は杯をバラバラにして、組み立てて、装置を作った。
ノウハウはあったよ。以前、多面体を造ったんだ。今は元気に遊園地をやってるよ。君も来る?」
「それで、造った装置の名前を、シラード。
多面体をぎゅっと挟んで、角度を変える装置。元気な男の子です」
「シラードの実績からウィシェを造った。さらに改良して、トゥー。次にホップ。
みんなで君の角度を探したよ。もちろん見つからなかった。見当違いだった。だからプレアで打ち止め」
「君の世界は面じゃない、多面体だった」
「そういうわけで、彼らには別の仕事を任せた。最後に会ったの何秒前だっけ?
僕は次の、新しい装置を造るよ。君に届くくらい、うんとでっかいの」
「すぐに追いつくよ、君の魔法に。アベルの幻想に」